経鼻内視鏡検査

Transnasal Endoscopy

鼻から内視鏡

鎮静剤を用いた内視鏡検査の欠点

 当クリニックでは患者さんに楽な内視鏡検査を受けていただくため、重篤な病気をお持ちでない限りは原則として鎮静剤を用いた内視鏡検査をお勧めしていますが、いくつかの問題点もありました。


【なかなか目が覚めない】


 検査が終わってもすぐには目が覚めません。ほとんどの患者さんは30分程度で目が覚めますが、なかには2時間以上もお休みになる方もいらっしゃいます。検査の日は一日ゆっくりと休みたいというご希望であればそれはそれでよいでしょうが、仕事が忙しい方はそれでは困るでしょう。先日私自身も他の病院で鎮静剤を用いた内視鏡(上部、下部両方)を受けました。検査中のことはほとんど覚えてなく大変楽で気持よかったのですが、済んだ後で結果の説明をうけたことも記憶になく、家に帰ってもボーッとしており、結局その日は一日何もできませんでした。従って検査の後に重要な仕事が控えている場合、検査後に車を運転する場合などは鎮静剤の使用はお勧めできません。


【心臓への負担】


 当クリニックでは患者さんの脈拍、血液の酸素飽和度、血圧などをモニターしながら検査を行っています。すると程度の差はあれ、ほとんどの患者さんの脈拍・血圧などが検査中は検査前に比較して上昇しています。それなのに鎮静剤を使用しているため本人の“苦しい”という訴えはほとんどありません。これは特に上部(食道、胃、十二指腸の観察)内視鏡で顕著です。実際は問題にはならない程度の現象ですが、心臓病などがある患者さんでは鎮静剤を使用した内視鏡検査は慎重にならざるを得ません。

経鼻内視鏡

 近年鼻から挿入する“経鼻内視鏡”が脚光を浴びています。これは太さが僅か6mm弱という大変細い内視鏡を鼻から挿入する手法です。一見変な検査のように思われますが、考えてみるとこれは大変理にかなった方法です。何故なら鼻から挿入するということは内視鏡がストレートに食道へ挿入されるので、咽頭(喉元)への刺激が口から挿入することに比べるとはるかに軽減できるからです。 皆さんのなかには吐気をもよおして嘔吐したいときに自分の指を喉元まで突っ込む行為をおこなった経験がある方もいらっしゃるでしょう。口から内視鏡を挿入するということはこれと正に同じことなのです。つまり胃カメラを飲んで“ゲーッ”“オェー”となる行為は生理的に正常な反応なのです。 もちろん医師の腕によっても程度は違いますが、どんな達人が検査しても“ゲーッ”“オェー”と反応する患者さんはいらっしゃいます。 当クリニックでは2005年春に経鼻内視鏡を導入いたしました。経鼻内視鏡についてもっと詳しく知りたい方は以下のHPへリンクしてみてはいかがでしょうか?

     鼻から.jp ~胃がんの予防と早期発見~  http://www.hanakara.jp

 その後モデルチェンジのたびに新機種を導入しており、画質もここ数年で飛躍的に向上しています。肝腎の検査自体は何のストレスもなく行なえています。また細く柔らかい内視鏡であるためか検査中の胃の動きも(今までの内視鏡と比較して)気にならないレベルであり、ブスコパンといった胃の動きを和らげる筋肉注射も不要です。これなら鎮静剤なしでも充分楽に検査出来ますし、重篤な心臓病の患者さんにも安心して勧められます。今後はこの経鼻内視鏡を第一選択としていきたいと考えています。但しかなり画質がよくなったとはいえ従来の口からの内視鏡と比較すると完全に同じクオリティとまではいえず、さらに経鼻内視鏡では今のところ観察と生検のみで、治療はできません。
 患者さんの全身状態やご希望にあわせて使い分けているのが現状です。





写真の説明
上が従来の経口内視鏡、
下が経鼻内視鏡です。
鉛筆よりも更に細いことがおわかりでしょう。